-
新刊『ティンダー・レモンケーキ・エフェクト』葉山莉子著
¥1,980
SOLD OUT
わたしの日記を送ります。 あなたの日記を送ってください。 Tinder上で「日記」と名乗り、夜な夜な毎日、日記を送る。 日記を交換するうちに、ひとりの男性に恋をした。 二〇二二年二月から一〇月までの わたしの日記と、数日間の彼の日記。 マッチングアプリでの男性からの「ヤレるヤれないの評価軸」に消耗していた「わたし」。ちょっとしたイタズラと復讐のつもりで、ある日「日記」と 名乗り、マッチした男性に日記を送りはじめた。突如日記が送られてくるというゲリラ活動をおもしろがる人が現れ、多い時には 100 人あまりと日記を送りあう。やがてひとりの男性に恋をして ......恋、狂気、ユーモア、批評、さらに性を真正面から語る、自立した女性の痛快な日記。 2022年12月自費出版したZINEは評判を呼び、瞬く間に完売。待望の書籍化です!
-
新本『なぜ私は凍りついたのか ポリヴェーガル理論で読み解く性暴力と癒し』(花丘 ちぐさ 編著ほか)
¥2,090
SOLD OUT
それは神経系のごく自然な反応。 恐ろしい出来事に直面したとき、生きのびるために起こる「凍りつき」。トラウマ・性暴力に神経生理学の画期的理論からアプローチする希望の書! 生き残りの反応から抜け出し、つながりを回復するために――。さまざまな立場の専門家・当事者・支援者が論じる、性暴力へのポリヴェーガル的視点の重要性、そして可能性。神経系への理解がもたらす大きな価値とは。
-
新刊『ケアの倫理──フェミニズムの政治思想』(岡野八代著)
¥1,364
身体性に結び付けられた「女らしさ」ゆえにケアを担わされてきた女性たちは、自身の経験を語る言葉を奪われ、言葉を発したとしても傾聴に値しないお喋りとして扱われてきた。男性の論理で構築された社会のなかで、女性たちが自らの言葉で、自らの経験から編み出したフェミニズムの政治思想、ケアの倫理を第一人者が詳説する
-
新本『無意識のバイアスを克服する』(ジェシカ・ノーデル著 、高橋璃子訳)
¥2,970
SOLD OUT
誰もが持つ「意図しない偏見や差別=無意識のバイアス」。最新の科学的研究と具体例を用い、克服のための、そして「形成させない」ための実践的アプローチを探る革新的一冊。 無意識のバイアスを克服する 個人・組織・社会を変えるアプローチ 誰もが大切にされる社会をつくるために—— 意図的でない偏見や差別を根絶することは、 現代における大いなるチャレンジなのだ 王立協会科学図書賞ほか数々の賞にノミネート 世界経済フォーラム年間ベストブック 『THINK AGAIN』のアダム・グラント、激賞
-
新刊『ガザとは何か パレスチナを知るための緊急講義』(岡真理著)
¥1,540
2023年10月7日、ハマース主導の越境奇襲攻撃に端を発し、 イスラエルによるガザ地区への攻撃が激化しました。 長年パレスチナ問題に取り組んできた、 パレスチナ問題と現代アラブ文学を専門とする著者が、 平易な語り口、そして強靭な言葉の力によって さまざまな疑問、その本質を明らかにします。 今起きていることは何か? パレスチナ問題の根本は何なのか? イスラエルはどのようにして作られた国? シオニズムとは? ガザは、どんな地域か? ハマースとは、どのような組織なのか? いま、私たちができることは何なのか? 今を知るための最良の案内でありながら、 「これから私たちが何を学び、何をすべきか」 その足掛かりともなる、いま、まず手に取りたい一冊です。 本書は、10月20日京都大学、10月23日早稲田大学で開催された緊急セミナーに加筆修正を加えたものです。
-
新刊『新版 いっぱしの女』(氷室冴子著)
¥770
SOLD OUT
時を経てなお生きる言葉のひとつひとつが、呼吸を楽にしてくれる――。大人気小説家・氷室冴子の名作エッセイ、待望の復刊! 解説 町田そのこ
-
新刊『たたかうひっこし』 文・写真 UNI イラスト 唐澤龍彦
¥900
SOLD OUT
文芸ユニットるるるるんメンバーUNIさんによる、引越が決まってからの約半年の怒涛の記録。 引越という実際にこなさないといけない物事の間で揺れ動く感情が、大切に精密に描かれていて、うんうんと相槌を打ちながら読みました。(店主c) パートナーの転職をきっかけに 北海道へ引越すことになった「わたし」。 終わりが近づく放課後児童会の仕事。 迫りくる「るるるるん」入稿。 溢れ出る本の山。 転がる頭痛薬。 本州から北海道はこんなにも遠い。 2023年7月9日発行 サイズ:148×106mm 全106ページ
-
新刊『10代のうちに考えておきたいジェンダーの話』堀内かおる著
¥990
SOLD OUT
「女子は理系が苦手、男子は文系が苦手」「男子は青系が好き、女子はピンク系が好き」って誰が決めたのでしょう? 10代が直面するジェンダーの問題を、過去・今、そして未来に向けて考察します。自分らしさとは何か、バイアスとは何かを自分ゴトとして考えた先に、多様性を認め合う社会をつくるヒントが見えてきます。
-
新本『右派はなぜ家族に介入したがるのか』中里見博 著 |能川元一 著 |打越さく良 著 |立石直子 著 |笹沼弘志 著 |清末愛砂 著
¥1,760
SOLD OUT
「個人の尊厳」と「両性の本質的平等」を掲げる24条は、9条と並んで改憲のターゲットとされてきた。 ――それはなぜか? 「家族」を統制しようとする右派の狙いを読み解き、24条と9条を柱とする「非暴力平和主義」を対置する。
-
新刊『Q&A多様な性・トランスジェンダー・包括的性教育 バッシングに立ちむかう74問』浅井 春夫 編著 |遠藤 まめた 編著 |染矢 明日香 編著 |田代美江子 編著 |松岡宗嗣 編著 |水野哲夫 編著
¥1,870
SOLD OUT
トランス排除を煽るネット上のデマや誤解、陰謀論をファクトに基づき検証。LGBTQへの差別や恐怖を利用し包括的性教育を攻撃する右派のバックラッシュを許さないために、当事者・専門家らが結集したコンパクトなQ&A集。
-
新刊『お金の知識があるだけで あなたが見られるはずのとびきり輝く世界について』安藤真由美著
¥1,760
SOLD OUT
「貯金」「働く」「投資」の中で、あなたの最も好きなこと、得意なことはどれでしょうか?世の中が投資ムードになっているといっても、必ずしも投資をしなければいけないわけではありません。不得意なことをやっても、どうせ続かないからです。 絶対忘れてはいけないのは、「お金は自分の人生をよくするために存在する」ということです。お金を貯めるために好きなことを我慢したり、好きではない職場で働いていませんか? お金は、自分を輝かせるためのただの道具です。あなたの人生はあなたが主役です。お金に主役の座を譲りわたしてはいけません。 では、どうしたらいいでしょうか? この本では、「貯金」「働く」「投資」の3つの側面から、一流機関元ファンドマネージャーが徹底的にわかりやすく解説します。 「一銀行1000万円以上預けると、銀行が倒産したときに返ってこない可能性がある」 「副業の方法」 「目論見書のどこをどう読めばいいのか」 など、読めばお金に強くなり、苦手意識もなくなるはずです。楽しみながら、お金の知識を増やしてみましょう。
-
新本『月経と犯罪』田中ひかる著
¥2,640
SOLD OUT
「女は生理の時、カッとして頭にきて何をするのかわからない」――。 女性は生理があるから罪を犯す、と信じられていた時代があった。その言葉の根拠を確かめ、信じられてきた理由を歴史的資料からひもとく。
-
新刊『教室から編みだすフェミニズム フェミニスト・ペダゴジーの挑戦』虎岩朋加著
¥2,530
SOLD OUT
男女平等をうたいながら、性差別的な言葉や行為に満ちた学校空間。差別と抑圧を超え、自己を解放する力をもたらすために教育に何ができるのか? 性差別の再生産を止め、既存の権力関係に変化をもたらそうとする新しいフェミニズム教育論!
-
新刊『私の「結婚」について勝手に語らないでください。』クァク・ミンジ著 清水知佐子訳
¥1,760
SOLD OUT
結婚しても、しなくても 私たちは結局“ひとり”を共に生きていく生き物なのだ。 ──前田エマさん(モデル) 「非婚」は結婚の「否定」ではない。 人と違う生き方に、大きな愛を贈ってくれる本。 ──安達茉莉子さん(作家・文筆家) * * * * * 累積聴取回数2000万回超! 話題のポッドキャスト「ビホンセ」制作兼進行役による〝結婚しない〟という選択。 --------- 「結婚しないんですか?」 「子供がほしくはないですか?」 「ひとりで寂しくないですか?」 ……非婚に対する偏見はまだまだ根深い。 * * * * * 非婚は結婚の反対ではなく、多様な生き方のひとつ。 自分の選んだ道に責任を持ち、時には弱音を吐いて傷つきながらも、自分を愛し、前に向かって進んでいく。 本書には、非婚でも結婚でも事実婚でも同性婚でも、人それぞれの生き方を尊重し、みんなが穏やかで楽しく暮らせるための温かなエッセンスが満載。 --------- 「結婚=幸せ」だなんてファンタジーじゃない?! 自分で選んで決めればいい。 ---------
-
『愛という名の支配』田嶋陽子著
¥500
SOLD OUT
どうして私はこんなに生きづらいんだろう。母から、男から、世間から受けてきた抑圧。 苦しみから解放されたくて、闘いつづけているうちに、人生の半分が終わっていた。 自分がラクになるために、腹の底からしぼりだしたもの──それが“私のフェミニズム"。 自らの体験を語り、この社会を覆い尽くしている“構造としての女性差別"を解き明かす。 すべての女性に勇気と希望を与える先駆的名著。
-
『記憶の街―震災のあとに』佐々木 美代子著
¥900
震災を記録しつづけるという姿勢は、「わすれないこと」と「関心を持ちつづけること」である。震災から5年間の認識の過程を一区切りとし、ノートと書簡という形式で、神戸の記憶を静かに勁い筆で綴る。
-
新刊『マリはすてきじゃない魔女』柚木麻子・作 坂口友佳子・絵
¥1,320
SOLD OUT
【児童書】小学中学年ごろ〜大人まで/総ルビ/挿絵入り だれかのための「すてき」はもういらない。 自分の心に素直になれば、あなたも「魔女」になれるかも!? ふたりの魔女ママとくらす11歳の魔女マリは、食いしんぼうで、おしゃれが大好きな女の子。「魔法は自分のために使ってはいけない」きまりを今日も忘れ、ジャムドーナツを「倍数の魔法」で巨大化させたから学校じゅうが大パニック! 親友ふたり、算数が得意なスジと魔女に憧れるレイのおかげで無事だったのに、ママからはお説教。大人たちは、みんなと生きるためには、人の役に立つ「すてきな魔女」になりなさいっていうんだけど、それってなんかヘンじゃない……? 『本屋さんのダイアナ』『らんたん』の柚木麻子、初の児童文学! マリにふりまわされながらも、町のみんなが自分のための魔法を見つけていく物語。小学中学年から大人まで/総ルビ/挿絵入り。 【推薦コメント】 なんという、ズバリ核心をついた題名! そう、魔女って「すてき」なものじゃないんです。魔女になるとはつまり野性を呼び起こし「我がまま」(私のまま)になるってこと。肝心かなめのアドバイスが全部入りのこの本は、間違いなく未来の魔女たちの必読書&すべての女の子たちのお守りとなるはず。ぜったい娘に読ませます! ーー谷崎榴美(現代魔女) 魔法があり、女のひと同士で結婚でき、トランスジェンダーの子が普通に暮らす、そんな夢のような世界にも差別はあって……。「すてきな魔女」からこぼれ落ちる女の子たちのキュートな活躍に、読んでいて元気が出ます。よくあるトランスジェンダー物語に飽きているひとにもおすすめ! ーー三木那由他(言語哲学者) ✳︎著者/柚木麻子(ゆずき・あさこ) 1981年生まれ。大学を卒業したあと、お菓子をつくる会社で働きながら、小説を書きはじめる。2008年に「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞してデビュー。以後、女性同士の友情や関係性をテーマにした作品を書きつづける。2015年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞と、高校生が選ぶ高校生直木賞を受賞。ほかの小説に、「ランチのアッコちゃん」シリーズ(双葉文庫)、『本屋さんのダイアナ』『BUTTER』(どちらも新潮文庫)、『らんたん』(小学館)など。エッセイに『とりあえずお湯わかせ』(NHK出版)など。本書がはじめての児童小説。 ✳︎絵/坂口友佳子 (さかぐち・ゆかこ) 大阪府出身。京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)キャラクターデザイン学科卒業。TIS会員。はじめての将来の夢は、人魚か魔女になること。大好きなファンタジーの世界に浸れることから、絵を描くのが大好きになる。現在は、イラストレーターとして活動し、絵本や児童文学の表紙や挿絵、お菓子のパッケージや広告などの絵を手がける。絵本に、自身の飼っている白猫をモデルにした『どこどこ けだまちゃん』(ひるねこBOOKS)がある。
-
新刊『40歳がくる!』雨宮まみ著
¥1,870
SOLD OUT
2016年に急逝した著者によるWeb連載が待望の書籍化!穂村弘、山内マリコ、初期の編集者らの特別寄稿も収録してよみがえる。 WEB連載中から読んでいた店主S、感想を述べたいのですがうまく言葉が出ません。読んでいて、面白い、切ない、辛い、苦しい、いろんな感情が渦巻きます。そして山内マリコさんによる〈東京のプリンセス〉、泣きました……。
-
『女子をこじらせて』雨宮まみ著 ポッド出版
¥800
SOLD OUT
「女子」という生きづらさに真っ向から向き合う、AVライター・故雨宮まみの半生記。大ヒットマンガ『モテキ』の著者、久保ミツロウ氏との特別対談も収録。店主Sが思う、シスターフッド系女の自伝の金字塔。 雨宮まみは「こじらせ女子」という流行語の生みの親とも言われる人。店主Sとは1歳違い、生まれ育ったのは同じ九州、大学入学のために上京、そして若い頃こじらせまくっている。共通点が多すぎて「え? これ私のこと?」と思いながら読みました。本の終盤、女性との連帯を感じるところで泣きながら読了。 2016年に著者が亡くなった時は大きな衝撃を受けましたし、なんでだよ! と思いました。もっと長生きしてほしかった。今の彼女がどんなことを考え、書くのかを知りたかったです。 ポッド出版 ※幻冬舎の文庫版ではありません 全252ページ
-
『女の子よ銃を取れ』雨宮まみ著
¥600
SOLD OUT
女にとって、外見とは何なのでしょうか――顔やスタイル、ファッションをめぐり、他者の視線と自意識の間でゆれ動くこじらせ女子の心をやさしくときほぐすエッセイ集。 顔やスタイル、ファッションをめぐり、他者の視線と自意識の間でゆれ動くこじらせ女子の悩みに効く! 心が楽になるエッセイ集。
-
『愛と欲望の雑談』岸政彦・雨宮まみ著 ミシマ社
¥800
SOLD OUT
女性性とうまく向き合えない自身を描いた『女子をこじらせて』で、世の女性の心を鷲掴みにしたライター・雨宮まみさん。日常に転がる「分析できないもの」を集めた『断片的なものの社会学』で、社会学の新たな扉を開いた岸政彦さん。活躍する分野も性格もまったく違うお二人による「雑談」。 以前紹介した『女子をこじらせて』の紹介文で語ったように、店主S、雨宮まみさんの大ファンでした。今でも遺されたツイッターやブログを時々読んでいます。恵文社さんでこの本を見つけ、即買い。 恋愛、浮気、ポエム葬など軟らかい話題についてふたりが語っていて、さらっと読めてしまうのですが、電車や町での人の冷淡さ、九州女子の「地元から出るな」と言われる問題など随所に鋭い切り込みが。笑いながら読めるのに考えさせられる本です。 全96 ページ
-
新刊『小山さんノート』小山さんノートワークショップ編
¥2,640
「小山さん」と呼ばれた、ホームレスの女性が遺したノート。 時間の許される限り、私は私自身でありたいーー2013年に亡くなるまで公園で暮らし、膨大な文章を書きつづっていた小山さん。町を歩いて出会う物たち、喫茶店でノートを広げ書く時間、そして、頭のなかの思考や空想。満足していたわけではなくても、小山さんは生きるためにここにいた。 80冊を超えるノートからの抜粋とともに、手書きのノートを8年かけて「文字起こし」したワークショップメンバーによるそれぞれのエッセイも収録。 【小山さんのノートより】 働きに行きたくない。仕事がかみあわない。もう誰にも言えない。私は私なりに精いっぱい生きた。(…)私にとって、大事なものは皆、無価値になって押し流されていく。(1991年11月7日) 雨がやんでいたのに、またふってくる。もどろうか。もどるまい。黄色のカサが一本、公園のごみ捨て場に置いてあった。ぬれずにすんだ。ありがとう。今日の光のようだ。(2001年3月18日) 駅近くに、百円ちょうど落ちていた。うれしい。内面で叫ぶ。八十円のコーヒーで二、三時間の夜の時間を保つことができる。ありがとう。イスにすわっていると、痛みがない。ノート、音楽と共にやりきれない淋しさを忘れている。(2001年5月7~8日) 五月二十日、夜九時過ぎ、つかれを回復して夜の森にもどる。 にぎやかな音楽に包まれ、心ゆったりと軽い食事をする。タコ、つけもの、紅のカブ、ビスケット、サラミ少々つまみながら、にぎやかな踊りをながめ、今日も終わる。夜空輝く星を見つめ、新たな意識回復に、十時過ぎまで自由な時間に遊ぶ。合計五百十六円拾う。(2001年5月20日) ほっと一人ゆったりと歩く。のどがかわいた。水かコーヒーを飲みたい。こんな活気のない金曜の夜、三百円もち、何も買えない。人間の人生は生きてる方が不思議なくらいだ。(2001年6月22日) 一体、五十にもなって何をしているんだと、いい年をしてまだ本をもち、売れもしないもの書いて喫茶に通っているのか……と、怒り声が聞こえそうな時、私の体験の上、選んだ生き方だと、私の何ものかが怒る。(2001年6月14日) 私、今日フランスに行ってくるわ。夜の時間をゆっくり使いたいの……。美しい夕陽を見送り、顔が今日の夕陽のように赤く燃えている。(2001年6月27日) 2階カウンターの席にすわり、ノートと向かいあう。まるで飛行機に乗ったような空間。まだ3時過ぎだ。流れるメロディーに支えられ、フランスにいるような気持ちに意識を切り替える。(2002年2月21日) 一時間、何もかも忘れのびのびと終わるまで踊ることができた。明るいライトに照らされた足元に、一本のビンがあった。冷たい酒が二合ばかり入っている。大事にかかえ、夜、野菜と共に夜明けまでゆっくりと飲み、食べる。(2002年9月28日) 五時過ぎ、十八時間の飛行機に乗ったつもりで意識は日本を離れる。外出をやめ、強い風が吹き始めた天空、ゆらゆらゆれる大地、ビニールの音。 (2003年9月7~9日) 目次 「はじめに――小山さんノートとワークショップ」登 久希子 「小山さんが生きようとしたこと」いちむらみさこ 小山さんノート 序 章 1991年1月5日~2001年1月31日 第1章 2001年2月2日~4月28日 第2章 2001年5月7日~8月21日 第3章 2001年8月22日~2002年1月30日 第4章 「不思議なノート」 2002年9月3日~10月4日 第5章 2002年10月30日~2003年3月16日 第6章 2003年7月3日~2004年10月12日 小山さんノートワークショップエッセイ 「小山さんとノートを通じて出会い直す」吉田亜矢子 「決して自分を明け渡さない小山さん」さこうまさこ 「『ルーラ』と踊ること」花崎 攝 「小山さんの手書きの文字」藤本なほ子 「沈黙しているとみなされる者たちの世界」申 知瑛 前書きなど はじめに――小山さんノートとワークショップ 登 久希子 「こやまさん」と呼ばれる女性がいる。小山さんは、都内の公園の「テント村」でテント暮らしをしていた。彼女が亡くなってから10年が経とうとしている。私たち「小山さんノートワークショップ」のメンバーは、小山さんが遺した膨大な量の書き物の文字起こしをする有志として集まり、かれこれもう8年以上活動をしている。 ■小山さんノートワークショップ 小山さんが暮らしていた都内のテント村の住人だったいちむらみさこさんは、具合の悪くなった小山さんを助けるべく、テント村の外にも声をかけて「小山さんネットワーク」を作ろうとしていた。しかし、ほどなくして小山さんは亡くなってしまう。何十冊という小さなノートを遺して。公園暮らしの雨や湿気であまり保存状態のよくないノートも多い。小山さんの火葬の日、いちむらさんたちはそれらのノートも一緒に燃やしてしまおうと考えたが、1行読んで、これは残さないといけない、伝えないといけない、と強く思った。いちむらさんたちは、小山さんの一周忌に追悼展覧会を行い、ノートから文章を抜粋して作った小さな冊子を来た人に手渡した。そしてノートの文字起こし、データ化を一緒に行ってくれる人を募ることにした。 追悼展覧会などを通して小山さんのノートを知った人や、興味を持った人が文字起こしに定期的に関わるようになっていった。そしてだいたい毎月1回、主に週末の午後から夜にかけて集まり、一緒にノートとパソコンに向かうというワークショップのスタイルが定着した。合間にストレッチをしたり、おやつを食べたりしながら文字起こしをし、最後にはいつも持ち寄った色とりどりの夕飯を囲んで、その日読んだところの感想やお互いの近況などを話した。おいしいものを食べることが、私たちは大好きだった。ノートの記述からうかがうに、小山さんも。 手書き文字のデータ化だけならば、わざわざ集まって行う必要もない。なんならパソコンでほとんど自動的にできる機能もある。しかし、小山さんの書くものには、ひとりでは太刀打ちできない難しさがあった。ひとつは、小山さんは達筆すぎて、読みとるのに苦労する文字が多かったこと。ふたつ目は、小山さんがかなり独特の当て字を多用していたため、ひとりでそれらを読み解くのはほとんど不可能だったこと。そして何より、書かれている内容に三つ目の難しさがあった。小山さんのテント生活の記述は、あまりにも衝撃的だったり、悲しくつらいものだったり、あるいは面白すぎたりする描写に満ちているから、「これは!」と思った箇所をただちに誰かと共有したくなる。ワークショップのメンバーは、文字起こしをしながら、それぞれの視点や経験から、小山さんに共感したり、小山さんという人を想像したり、翻って自分自身を見つめ直したりしていたのだと思う。 メンバーのなかで生きている小山さんと会ったことがあるのは二人だけだった。他のメンバーは小山さんの姿を見たことも声を聞いたこともなかったけれど、そんなことは私たちにとってあまり重要ではなかった。二人の話やノートの内容から小山さんのいでたちなどを想像して、それぞれの小山さんが立ち上がる。私たちはノートを通して、小山さんをとても身近に感じるようになっていった。 ■ノートから立ち上がるもの/こと ワークショップでは、文字起こしだけでなく、フィールドワークや路上での朗読、座談会をしてみたりもした。小山さんがよく立ち寄ったらしい神社や常連だったと思われる喫茶店などをメンバーとともに訪れると、ノートに書かれていた状況がちがった解像度で見えてくる。また、座談会は、文字起こしを進めるなかで各自が考えてきたことを改めて語り、共有する機会となった。日が落ちて薄暗くなってくる屋外で小山さんノートの一節を朗読してみるのは、小山さんがそこに現れたかのような、自分の声が自分の声ではなくなるかのような不思議な体験だった。ときどき、足をとめて耳を傾けてくれる人もいた。 思えば、朗読以外はいずれも、ワークショップのメンバーだけで行われたもので、「小山さん」をどのようにメンバー以外にひらいていくのかは、つねに私たちにとって試行錯誤が必要な問題だったのだと思う。小山さんのノート、それに関わる私たち。伝え方を間違ってしまうと、とんでもない方向で誤解されてしまうかもしれない。メンバーのバックグラウンドはさまざまだが、私たちは、小山さんに対するさまざまなレベルでの「共感」を共通項として持っていた。そして、その「共感」を私たちから広く外に向かってひらいていくことについて、逡巡していた。 ■小山さんノートをひらく ワークショップは、コロナ禍のもとでもオンラインでつづけられた。びっしりと文字が書き込まれたA6サイズのノートおよそ80冊をテキストデータにしてみると、A4サイズの用紙に3段組みで659ページもの量になった。私たちが確認できたのは1991年から2004年までに書かれたノートだが、実際にはもっと多くのノートが存在したようだ。小山さんが書いているとおり、公園暮らしでそれだけの量のノートを何年も保管しつづけるのは決して簡単なことではなかっただろう。 小山さんのノートを、いつかワークショップのメンバー以外の人にも読んでもらうことができたら、という思いは文字起こしをはじめた当初から私たちのなかにあった。ただ、そんな膨大な量の文章をそのまま世に出すのはあまり現実的でない。「出版」に際しては、なんらかの編集作業が必要になる。その作業はメンバーにとってものすごく難しい過程だった。そもそもほとんどのメンバーが、小山さんノートの全体を通して読んだことがなかった。だから659ページの原稿をひたすらみんなで読み込む必要があった。積み上げられた小山さんノートを前に文字起こしをしていたころの、果てしない作業の感覚を思いだす。そして、身を切る思いで抜粋した原稿に、それぞれが重要だと思う箇所や思い入れのある部分を追加したり、また他の部分を削除したりしながら、ノートに書かれた小山さんの生を、理解しきれない部分も含めて、どのように立ち上げることができるのか、話し合いが重ねられた。抜粋が恣意的になりすぎないように、小山さんのノートの全体の雰囲気が伝わるように。どれだけノートを読み込んでも、結局のところメンバーの誰も小山さん自身ではないし、小山さんの真意はわからない。それに、「真意」は本人ですら揺れていたり変化したりするかもしれない。そんなことを考えながら、綱渡りのように、抜粋作業は進められた。そして完成したのが本書である。 本書には、1991年から2004年までに書かれた小山さんノートからの抜粋が収められている。アパートに住んでいた頃から、公園に移り、本格的にテント暮らしをはじめる頃までの序章につづき、第1章から第6章まで、小山さんの哲学、テントにおける男性との共同生活、そこで受けた暴力、テントでのひとり暮らし、共同生活を送った男性の死とその後の極貧生活、夢や幻想などがおおよそ時系列に沿って展開する。しかし、回想による記述も多いため、編集を行った私たちとしては、どこから読んでもらってもよいと考えている。 また小山さんノートの本文に入る前に、いちむらさんが小山さんの最期の日々に関わった様子を記したエッセイを、そして本書の最後にはワークショップの各メンバーによるエッセイを収録した。 書くという行為と、そのための時間・空間をテント暮らしの日常の中で維持するのは並大抵のことではない。小山さんは、彼女が「フランス」や「イタリア」と呼ぶ喫茶店にやっとの思いでたどりつくと、コーヒー1杯を前に何時間もノートを書いたり、それを読み直したり、さらに書き加えたりしていた。何年も後に記述を足しているので、読んでいる私たちとしては、時間が行ったり来たり、タイムスリップするような感覚を覚えることも多かった。 小山さんは、ユーモアのある、どこか冷静な記述をとおして、自分自身をある意味でつきはなしてみたり、赦してみたりしながら、日々を生きつないでいたのではないかと思う。ノートに出てくるフランスへの旅やルーラという存在は、空想や妄想のようにもみえる。でも小山さんは現実をあきらめて「空想」に生きていたわけではない。それらの「妄想」は現実を生きるために小山さんが生み出したものであり、また小山さんに与えられたものだったのだ。それらを含めた現実を、小山さんは生きていた。ときに悲嘆に暮れることはあっても、ノートの中の小山さんは、常に何かの可能性や未来を信じていた。 小山さんノートは、決して簡単に読み進めることができるものではない。でも難解なものでもない。ひとりで読み進めることが難しいときは、この本を持って、小山さんのように、喫茶店など人の気配のあるところに、外の景色が見えるところに行ってみるのもよいかもしれない。 著者プロフィール 小山さんノートワークショップ (コヤマサンノートワークショップ) (編) 2015 年3月から月1回ほどのペースで集まり、小山さんが遺した手書きのノートの文字起こしや、小山さんが歩いた道をノートに書かれたとおりにたどってみるフィールドワーク、路上朗読会、ノートとのかかわりを語りあう座談会などを行ってきた。野宿者、ひきこもり、非正規労働者、アーティスト、留学生、研究者など、様々なメンバーがゆるやかに入れ替わりながら継続している。
-
新刊『抵抗への参加 フェミニストのケアの倫理』キャロル・ギリガン著、小西真理子・ 田中壮泰・小田切建太郎訳
¥2,530
世界的なベストセラー『もうひとつの声で』に自ら応答した本、いよいよ日本で出版! ケアの倫理は、フェミニストの倫理であると同時に人間の倫理である ケアの倫理の金字塔『もうひとつの声で』の刊行から時を経て、ギリガンがたどりなおす抵抗の軌跡。 出版後に向けられたフェミニストからの批判への応答に加え、ギリガンの半生の語りと、そこから紡ぎだされるケアの倫理をめぐるアカデミックエッセイ 愛の要求も民主主義社会における市民権の要求も、同じひとつのものだということを教えてくれる少女たちと女たちの声をここに読む! 本邦初訳
-
新刊『ノンバイナリー 』マイカ・ラジャノフ、 スコット・ドウェイン編、山本晶子訳
¥3,300
SOLD OUT
10代から50代まで、職業も人種もジェンダー表現もさまざまなノンバイナリーたちが、自身を率直に語る回想録。 きっとあなたも気づくはず。ノンバイナリーとして生きているのは、まさしくここ、自分たちの町に住む、隣人、同僚、友人、家族、愛する人なのだと。 近年、ジェンダーを論じる際には、旧来の男女二元論を超えるようになってきている。本書は現代社会に生きる「ノンバイナリー」(ジェンダー・アイデンティティが男女の二枠に当てはまらない人)たち30人の率直な語りを集め、ジェンダーとは何かという問いに真正面から向き合う。